注文していた備前焼の杯が届いた。梱包は至極丁寧。
そっくりそのまま保存したくなってしまう。桐の箱を
開けるときの高揚感は久々の感覚だった。杯は想像より
口径が大きく雄大な印象。酒を注いで口に運んでみると、意外と
バランスをとるのが難しい。こんな平べったい外見だが
扱う上でセンターの意識が喚起される。ワイングラスなどとは
まったく対照的な造形だが、十全に持ち・注ぎ・口に運び
中の酒を存分に味わいつくす上で要求される扱い様は
かなり相通ずるのかもしれない。
「いい道具」の条件とは何であろうか。
それを手にする持ち主の感覚が鈍い・低い状態でも
自らの機能を発揮してみせる懐の深さか、
あるいは下手な扱いをすれば後ろ足で蹴りつけるように
持ち主に惨めさを味わせるが相応の感性と気合で臨めば
それに応えてくれるような、持ち主の感覚を高めることを
要求するが如き厳しさか。否、導く優しさというべきか。
それに沿ってこそ味わえる悦楽というもの、それを味合わせて
くれるモノはこの世に確かに存在する。
自分が鈍いままでは元も子もないのだが。
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